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微生物生態学:氷河融解水が流入する河川における細菌マイクロバイオームの多様性と生物地理

Nature 637, 8046 doi: 10.1038/s41586-024-08313-z

山岳氷河の急速な融解とそれらの河川の消失は、気候変動を象徴する現象である。氷河融解水が流入する河川(GFS:Glacier-fed stream)は低温で貧栄養の不安定な生態系であり、そこに生息する生物は微生物バイオフィルムが支配的である。しかし、GFSのマイクロバイオームに関する現在の知識は不十分で、氷河の縮小に対するGFSの応答の理解は含まれていない。今回我々は、メタバーコーディングおよびメタゲノミクスを利用することにより、地球上の主要な山地から流出する152のGFSにわたって、底生マイクロバイオームの細菌に関する網羅的な調査を行った。その結果、GFSの細菌マイクロバイオームは、分類学的にも機能的にも他の雪氷圏マイクロバイオームとは異なっていることが明らかになった。GFSの細菌は多様で、半数以上が特定の山地に固有であり、中には単一のGFSのみに見られるものも存在し、汎存性で多く存在するものは少数であった。我々は、地理的隔離と環境選択がGFS細菌の生物地理をどのように形作っているかを示す。こうした生物地理は、山地間および半球間で異なる構成パターンによって特徴付けられた。さらに、系統発生解析によって、環境選択に起因して微小多様性(microdiversity)を持つクレードが見いだされ、これらがおそらく機能的復元力を増進するとともに、GFS細菌の生物多様性と生物地理に寄与していると考えられる。気候が誘発する氷河の縮小は、この固有のマイクロバイオームを危機にさらしており、本研究は、消えゆくGFS生態系に関する今後の気候変動微生物学研究に対して全球的な参照データをもたらす。

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