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超分子化学:人工分子モーターによる触媒作用を通じた化学エネルギー変換
Nature 637, 8046 doi: 10.1038/s41586-024-08288-x
細胞は、触媒作用を通して動力供給されたモータータンパク質によって生じるさまざまな機械的活動を示す。これは、化学反応の加速がいかにして、その反応から解放されたエネルギーを分子触媒によって変換する(そして結果として仕事をなす)ことを可能にし得るかという根本的な疑問を提起する。今回我々は、化学エネルギーから機械力への分子レベルの変換が起こることを、触媒駆動人工分子モーターの方向性回転によって駆動される架橋ポリマーゲルの動力収縮と動力再膨張の形で実証する。ゲルのポリマー骨格に組み込まれた触媒駆動モーター分子のローターがステーター周りで連続的に360°回転することで、架橋ネットワークのポリマー鎖が互いの周りでねじれる。これによって、徐々にねじれが増加して絡まりがきつくなるため、元の体積の約70%までゲルの巨視的収縮が起こる。続いて逆のエナンチオマー燃料供給系を加えると、モーター分子の逆方向の回転に動力が供給され、絡まりがほどけて、ゲルが再膨張する。新しい方向の鎖のねじれに連続的に動力供給すると、ゲルは再収縮する。アクチュエーションに加え、ゲル中のモーター分子回転は、ヤング率と貯蔵弾性率の変化など、他の化学的結果や物理的結果をもたらす。貯蔵弾性率は、モーター回転から生じる鎖交差の増加に比例する。合成有機触媒によって負荷に逆らってなされる仕事の実験的実証、およびそのエネルギー変換機構は、生物学的モーターによる力発生機構にまつわる論争と人工分子ナノテクノロジーの設計原理の両者に情報を与える。

