神経科学:ストレスの神経符号を解明して無快感症を制御する
Nature 637, 8046 doi: 10.1038/s41586-024-08241-y
無快感症は、報酬に関する探求・価値・学習への動因が低減した状態で、大うつ病性障害(MDD)の中核をなす特徴の1つである。無快感症の神経基盤や、その情動状態がどのように行動を導くかは、よく分かっていない。今回我々は、マウスは心的外傷性社会ストレスにさらされると、感受性の個体は社会的に離脱して快感喪失状態になるが他の個体はレジリエントであるという事実を利用して、無快感症の神経符号を調べた。高密度電気生理学的方法により、扁桃体基底外側部(BLA)と海馬腹側CA1(vCA1)の神経活動パターンを記録したところ、感受性とレジリエンスの神経シグネチャーが特定された。マウスが能動的に報酬を探求するとき、レジリエントなマウスのBLA活動には、報酬選択の間でロバストな区別が見られた。一方、感受性のマウスには反芻的な特徴が見られ、BLAニューロンは前回選んだ報酬を続けるか、そこから切り替えるかの意図を符号化していた。感受性マウスでvCA1からBLAへの入力を操作すると、機能低下した神経動態は救済され、レジリエンスと関連した動態が強められて、快感喪失行動が逆転した。さらに、マウスが休息状態にあるとき、感受性マウスのBLAの自発性活動は、より多数の異なる神経集団活動状態を示した。この自発性活動によって神経集団のアイデンティティーを解読できるようになり、当該マウスにストレス体験があるかどうかを、行動の結果のみからよりも正確に推測できた。今回の研究は、心的外傷性ストレスへの応答の個体差を説明する集団レベルの神経動態を明らかにしており、vCA1からBLAへの入力の調整が、こうした動態を調節することでレジリエンスを増強させ得ることを示唆している。

