がん:膵臓がんでの細胞間シグナル伝達の臨床機能プロテオミクス
Nature 637, 8046 doi: 10.1038/s41586-024-08225-y
膵管腺がん(PDAC)では、間質性の高い非典型的な腫瘍微小環境(TME)が見られ、これはPDACの予後不良に大きく関与している。本研究で我々は、PDAC腫瘍におけるがんとストローマ細胞の間の直接的な細胞間シグナル伝達についての理解を深めるために、多次元プロテオミクス戦略を開発し、これをTMEProと命名した。我々はTMEProを用いて、100例のヒト膵臓組織試料について、糖鎖が結合している分泌型タンパク質と細胞膜タンパク質のプロテオームを非常に詳細にプロファイリングし、細胞タイプの起源を明らかにし、パラクリン型のクロストーク候補(特にチロシンリン酸化を介した)を特定した。また、膵臓腫瘍の進行中の時間的動態を、遺伝子組換えを行ったPDACマウスモデルで調べた。機能的には、ストローマ細胞とがん細胞の間の相互シグナル伝達は、間質のPDGFR–PTPN11–FOSシグナル伝達軸を介して行われることが明らかになった。さらに我々は、PDAC腫瘍で細胞膜タンパク質の一般的なシェディング機構を調べ、マトリックスメタロプロテアーゼによるAXL受容体チロシンキナーゼエクトドメインのシェディングが、PDAC TMEでの細胞間シグナル伝達調節のさらなる次元をもたらすことを示す。重要なことに、シェディングしたAXLのレベルはリンパ節転移と相関する可能性があり、AXLシェディングやそのキナーゼ活性を抑制すると、がん細胞増殖の阻害に著しい相乗効果が見られた。まとめると、TMEProは一般的に応用可能な臨床機能プロテオミクス戦略であり、PDAC TMEをよりよく理解し、新たな診断標的や治療標的の発見を促すための包括的な研究資源となる。

