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植物遺伝学:パンゲノムがコムギの構造バリアントを生息環境や育種と結び付ける
Nature 637, 8045 doi: 10.1038/s41586-024-08277-0
コムギは中国において、優れた育種システムと系譜情報が存在する、2番目に生産量の多い食用作物である。コムギ栽培品種のゲノムの足跡を調べることで、将来の育種努力の潜在的な道筋が明らかになる。本論文で我々は、中国のコムギ育種史を記録する17の栽培品種について、染色体レベルのゲノムアセンブリを報告する。比較ゲノム解析によって多数の構造再配列が見いだされ、特定された24万9976の構造バリアントのうち、49.03%(12万2567)は長さが5 kbを超えていることが分かった。1980年代に開発された栽培品種には構造バリアントの顕著な蓄積が認められ、この傾向は、当時の育種プログラムで欧米の品種が大規模に導入されたことと関連付けられた。また、セントロメア近傍領域の構造バリアントが交差事象の減少と関連していることも明らかになった。我々は、パンコムギ(Triticum aestivum)が、環境変化に対する適応戦略としてのVRN-A1遺伝子の変異および重複により、春播型から冬播型へと進化したことを示す。中国西北部におけるコムギの栽培品種の変化と、食餌の選好性、移動、文化統合との関連性も確認された。さらに、1RS末端のpSc200縦列反復配列の大規模な存在/不在バリアント(PAV)が発見され、コムギゲノムにおけるそれ自体の急速な進化が示唆された。17の代表的な開発品種の高品質なゲノムアセンブリ、およびそれらと10+パンゲノムとの良好な補完性は、今後のゲノミクスに支援されたコムギ育種に強力な基盤をもたらす。

