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がん:がんで低酸素状態によって誘導される炎症性細胞死の機構

Nature 637, 8045 doi: 10.1038/s41586-024-08136-y

低酸素状態にあるがん細胞は多くの抗腫瘍療法に抵抗性を示し、再発を引き起こす可能性がある。我々は以前に、プロテインチロシンホスファターゼ(PTP1B)の欠損あるいは阻害は、RNF213タンパク質の活性化が引き起こした低酸素状態でのヒト上皮増殖因子受容体2陽性乳がん細胞の細胞死を促進することを見いだした。大型のタンパク質であるRNF213は、複数のAAA-ATPアーゼドメインと2つのユビキチンリガーゼドメイン(RINGとRZ)を持ち、もやもや病、脂肪毒性および自然免疫に関連付けられている。本論文で我々は、PTP1BとABL1/2はRNF213のチロシンリン酸化を逆方向に制御し、その結果として、RNF213のオリゴマー化およびRZドメインの活性化が調節されることを報告する。RZドメインは、NF-κBの主要な調節因子であるCYLD/SPATA2をユビキチン化してその分解を引き起こす。CYLD/SPATA2レベルの低下はNF-κBの活性化とNLRP3インフラマソームの誘導につながり、これらは低酸素によって誘導される小胞体ストレスと共に、ピロトーシスによる細胞死を引き起こす。このモデルと一致して、CYLD欠失は、PTP1B欠損がヒト上皮増殖因子受容体2陽性乳がんの異種移植片の増殖へ及ぼす影響を表現型模写するのに対し、NLRP3欠失は影響を遮断した。RNF213変異体を再構築して行った解析により、RZドメインは腫瘍細胞の細胞死を仲介していることが確認された。我々の結果は、低酸素性腫瘍における炎症性細胞死の制御に重要であり、おそらくは標的化可能な独特のP1B–RNF213–CYLD–SPATA2経路を明らかにし、RNF213調節に新たな知見をもたらした。今回の結果はまた、もやもや病や炎症性疾患、自己免疫疾患の病因に関わりを持っていると考えられる。

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