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植物科学:根の幹細胞ニッチの分化に対する精子由来の父性効果

Nature 634, 8032 doi: 10.1038/s41586-024-07885-0

受精では、親の遺伝情報が接合子へと導入されて胚発生を誘導する。受精後の発生に対する親の寄与については数十年にわたって議論されてきており、現在得られているデータでは両親が接合子のトランスクリプトームに寄与することが示されていて、初期の胚発生に父親が役割を果たすことが示唆されている。しかし、受精後の発生に対する特異的な父性効果や、その基盤となる分子経路はほとんど解明されていないため、初期の胚発生や植物の成長への父親の寄与は十分に実証されていない。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)では、TREE1とそのホモログDAZ3が精子に限って発現されていることを明らかにした。精子の発生と受精には明らかな欠陥は見られないが、意外なことにtree1 daz3は、胚の根の幹細胞ニッチの分化異常につながることが分かった。この異常は実生でも存続していて、根の先端の再生が行われず、動物における先天性欠損に相当する。TREE1とDAZ3は母由来のRKD2の転写を抑制することによって機能し、根の幹細胞ニッチに対するRKD2からの有害な母性効果を軽減する。このように、これらの知見は精子で生じた遺伝的欠失が植物の特定の器官の分化に永続的な父性効果を及ぼし得る仕組みを明らかにするとともに、片親起源の遺伝子が相互作用して正常な胚発生を確実にもたらす仕組みを分かりやすく示している。またこの研究によって、配偶子の品質や遺伝的欠陥がどのように特定の植物器官の形成に影響する仕組みについて、新たな考察がもたらされた。

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