生物工学:単一分子の塩基配列解読により明らかになったDNAのミスマッチと損傷のパターン
Nature 630, 8017 doi: 10.1038/s41586-024-07532-8
変異は一生を通じて体内のあらゆる細胞のゲノムに蓄積し、がんなどの疾患を引き起こす。ほとんどの変異は、DNAの二本鎖のうちの1本でのヌクレオチドのミスマッチもしくは損傷として始まり、修復されなかったり誤修復が起こったりすると二本鎖変異になる。しかし、現在のDNA塩基配列解読技術では、一本鎖で最初に起こるこのような事象を正確に解析することはできない。今回我々は、単一分子でのロングリードによる塩基配列解読法を開発し、HiDEF-seq(hairpin duplex enhanced fidelity sequencing)と命名した。この方法では、塩基置換がDNAの片方あるいは両方の鎖に存在する場合に、単一分子の忠実度を達成する。HiDEF-seqはまた、一般的なタイプのDNA損傷であるシトシン脱アミノ化も単一分子の忠実度で検出する。我々は、がん易罹患性症候群の患者からの試料などさまざまな組織に由来する134のサンプルのプロファイリングを行い、一本鎖のミスマッチと損傷のシグネチャーを得た。これらの一本鎖のシグネチャーと既知の二本鎖変異のシグネチャーの間に一致があることが分かり、これによってがんの始まりとなる損傷のアイデンティティーが明らかになった。ミスマッチ修復と複製ポリメラーゼによる校正の両方を欠く腫瘍は、ポリメラーゼによる校正のみを欠く試料と比べると、明確な一本鎖ミスマッチパターンを示す。また、APOBEC3Aに関する一本鎖損傷シグネチャーも明らかになった。ミトコンドリアゲノムでは、我々の知見は主に複製中に生じる変異誘発機構を裏付けている。二本鎖DNAの変異は変異過程の終点にすぎないため、始まりとなる一本鎖事象を単一分子の分解能で検出するための我々の手法は、さまざまな状況、特にがんや老化で変異が生じる仕組みの研究を可能にするだろう。

