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生物工学:DNAの損傷および修復の変異原性をDNA鎖レベルで分析する
Nature 630, 8017 doi: 10.1038/s41586-024-07490-1
DNA塩基の損傷は、発がん性変異の主な原因の1つである。こういった損傷からは、損傷分離過程を介して鎖レベルでの変異パターンと複数の対立遺伝子での変異が生じる可能性がある。今回我々は、これらの特性を利用して、複製や転写のようにDNAの2本の鎖が非対称的になっている過程が、どのようにDNAの損傷と修復を形作るかを明らかにした。リーディング鎖とラギング鎖の複製では機構が異なるにもかかわらず、両方の鎖で忠実度と損傷許容性は同じだった。DNAの小型アルキル付加物の場合、我々の結果は、同一の損傷乗り越えポリメラーゼが両方の複製鎖の所に迅速に誘引されるというモデルを裏付けており、これはUVにより誘発される大型のDNA付加物の場合に見られる鎖によって非対称的な許容性とは全く対照的である。損傷が繰り返し起こる部位への異なる複数の変異の集積は、修復過程の相対的効率をゲノム全体にわたって一塩基レベルの分解能で数値化する方法となる。我々は、DNA損傷が誘発する変異は、DNAへの接近可能性が修復の効率に及ぼす影響によっておおむね形が決まり、DNA損傷の程度によって決まるのではないことを、複数のスケールで明らかにした。さらに、ヌクレオチド除去修復の忠実度を大幅に低下させることによって、発がん性変異の発生を積極的に促進する特殊なゲノム条件の存在も明らかになった。これらの結果は、DNAの鎖に非対称的に働く機序がDNA損傷の形成、許容、修復の基盤となり、がんゲノムの進化を形作る仕組みについての手掛かりをもたらす。

