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代謝:食餌が誘発する精子由来ミトコンドリアRNAのエピジェネティック遺伝

Nature 630, 8017 doi: 10.1038/s41586-024-07472-3

精子には、複雑で環境感受性の小分子ノンコーディングRNA(sncRNA)プールが存在し、これらのsncRNAは子の発生や成体の表現型に影響を及ぼす。精巣上体の精子が環境からの合図に直接影響されるかどうかは、完全には解明されていない。今回我々は、受胎前の急性的な高脂肪食摂取の2つの異なるパラダイムを用いて、精子のsncRNAプールや子の健康に対する精巣上体と精巣の寄与を対比して解析した。その結果、精巣上体の精子には環境感受性があるが、発生中の生殖細胞にはそうした感受性がないことが明らかになり、精子由来の因子としてミトコンドリアtRNA(mt-tRNA)とその断片(mt-tsRNA)が特定された。ヒトでは、精子中のmt-tsRNAがボディーマス指数(BMI)と相関しており、受胎時に父親が体重過多だと子の肥満リスクが2倍になり、代謝系の健康が損なわれることが分かった。ミトコンドリア機能関連遺伝子に変異のあるマウスの精子sncRNAの塩基配列を解読し、その野生型の仔の代謝表現型を調べたところ、mt-tsRNAの上方制御はミトコンドリアの機能不全の下流に位置することが示唆された。遺伝的雑種の2細胞胚で、単一胚トランスクリプトーム解析を行ったところ、受精の際にmt-tRNAが精子から卵母細胞に移行することが明らかになり、このmt-tRNAが初期胚の転写制御に関わることが示唆された。この研究によって、受胎時の父親の健康状態が子の代謝に重要なことが裏付けられ、mt-tRNAが食餌に誘発される精子由来因子であることが明らかになり、生理的条件下で受精時に精子のミトコンドリアRNAが父親から子へと移行することが実証された。

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