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がん:3Dゲノムマッピングで明らかになったヒト膵臓前がん状態の多病巣性

Nature 629, 8012 doi: 10.1038/s41586-024-07359-3

膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)は膵臓がんの最もよく見られる前がん病変だが、サイズが小さく、ヒトでは調べにくいため、その研究は難しい。ヒトPanINの数や大きさ、接続性についてはほとんど分かっておらず、がんの初期発生に関する重要な手掛かりが得られていないことは重大である。本研究で我々は、単一細胞分解能で定量的な組織学的3D再構築を行うための機械学習パイプラインを用いて、肉眼的に正常なヒト膵臓の46の大規模試料を解析することにより、ヒトPanINを微細解剖学的に調べた結果を報告する。我々は、PanIN間およびPanIN内での遺伝学的関係性を解明するために、3Dモデル化が複数領域のマイクロダイセクション、標的化エキソームと全エキソームの塩基配列解読をガイドするというワークフローを開発した。これらの試料から、PanIN負荷の平均は1cm3当たり13と算出され、無傷の正常な成人膵臓には数百のPanINが存在し、そのほぼ全てが発がん性KRASホットスポット変異を持つと推定された。また、PanINのほとんどは、異なる体細胞変異プロファイルを持つ別個のクローンとして生じることが分かった。空間的に連続したPanINの一部は複数のKRAS変異を持つことが明らかになり、計算解析とin situ解析によって、それらの腫瘍内では異なるKRAS変異がそれぞれ別の細胞亜集団に局在することが実証され、これらの亜集団がポリクローナルな起源を持つことが示された。PanINの広く見られる多病巣性と遺伝的不均一性は、ヒト膵臓で前がんのイニシエーションを促し、特異なプログレッションリスクを生じる機構についての重要な疑問を提起している。今回のヒトPanINでの分子的変化に関する詳細な3Dゲノムマッピングは、膵臓がんの早期検出と合理的な阻止に対する実験的基盤となる。

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