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発生生物学:ヒト胚コンパクションの仕組み

Nature 629, 8012 doi: 10.1038/s41586-024-07351-x

ヒト胚は、まずコンパクションによって形作られ、この際に細胞は緊密に接触する。生殖補助医療技術の研究から、ヒト胚がコンパクションに失敗するのは、主に接着の異常が原因であることが示されている。動物の形態形成について現在分かっていることに基づくと、細胞の収縮性などの他の形態形成の原動力が、ヒトの胚の形作りに関与している可能性がある。しかし、ヒト胚の形態形成を引き起こす分子的機構、細胞的機構、物理的機構はまだ解明されていない。今回我々は、研究のために提供されたヒト胚のマイクロピペット吸引を行い、コンパクション中の細胞表面張力をマッピングした。これによって、張力は、細胞–培養液の界面では4倍に増加するが、細胞間接触では安定に保たれることが示された。つまり、細胞–培養液の界面での張力の増加がヒト胚のコンパクションを駆動している。このコンパクションは、マウス胚のコンパクションと質的に類似している。ヒトとマウスをさらに比較すると、質的には類似しているものの、量的には異なる機械的戦略が明らかになり、ヒト胚の方が機械的効率が低いことが分かった。ヒト胚で細胞の収縮性および細胞間接着を阻害したところ、コンパクションにはこの両方の細胞過程が必要であるが、コンパクションに関与する表面張力を制御するのは収縮性のみであることが分かった。細胞の収縮性と細胞間接着は、コンパクション失敗の場合に異なる機械的シグネチャーを示す。自然に失敗する胚の機械的シグネチャーを解析することで、コンパクションを起こさない胚あるいは除外細胞のある部分的コンパクションを起こした胚は、収縮性に異常があるという証拠が見いだされた。まとめると我々の研究は、ヒトの体を形作る最初の形態形成運動を推進する力を生み出すには、進化的に保存された細胞収縮性の増加が必要であることを示している。

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