Article
分子生物学:ポリコーム構成要素の一時的喪失は、がんのエピジェネティックな運命を誘導する
Nature 629, 8012 doi: 10.1038/s41586-024-07328-w
がんのイニシエーションとプログレッションは一般に体細胞変異の蓄積と関連しているが、腫瘍発生とがん感受性のさまざまな側面の根底には大きなエピゲノム変化が見られるため、遺伝的機構だけが悪性形質転換のドライバーではない可能性が示唆される。しかし、腫瘍発生を開始するに当たって、変異とは無関係に、完全に非遺伝的機構だけで十分なのかどうかは知られていない。今回我々は、ショウジョウバエ(Drosophila)において、ポリコーム群タンパク質を介した転写サイレンシングの一時的な摂動が、がん細胞運命への不可逆的な切り換えの誘導に十分であることを明らかにした。これには、腫瘍発生を引き起こし得る遺伝子の不可逆的な脱抑制が関連している。これらの遺伝子には、JAK–STATシグナル伝達経路のメンバーやがん遺伝子ZEB1のハエホモログであるzfh1が含まれており、ポリコーム群の摂動が誘発する腫瘍発生にはzfh1の異常な活性化が必要であった。これらのデータは、ドライバー変異がなくてもポリコーム群タンパク質の可逆的な欠乏によってがんが誘発され得ることを示しており、腫瘍はエピジェネティック調節の異常によっても生じる場合があり、変化した細胞運命の遺伝を引き起こすことを示唆している。

