社会科学:遠隔共同研究では画期的なアイデアの融合が起こりにくい
Nature 623, 7989 doi: 10.1038/s41586-023-06767-1
イノベーションの理論は、社会的ネットワークやチームが持つ、画期的な発見の推進役としての役割を強調している。世界各地では現在、科学者や発明家がかつてないほど多く存在し、相互のつながりもこれまでになく増大している。しかし、発見をする人の数が多くなり、新たな形で再構成され得るアイデアが増えているにもかかわらず、新たなアイデアは発見されにくくなりつつあることが研究で示唆されており、これは組み換え成長(recombinant growth)の理論とは矛盾する。本論文で我々は、この見かけ上の謎に光を当てる。我々はまず、過去半世紀にわたる世界中の研究論文2000万編および特許出願400万件を分析し、複数都市にまたがる遠隔共同研究の増加を立証することで、科学者や発明家の相互のつながりの世界的な増大を明確に示す。我々はまた、全ての分野、時期、チームの規模にわたり、こうした遠隔チームに所属する研究者は、全てのメンバーが同一都市内にいるチームの場合と比較して、画期的な発見をする可能性が一貫して低いことを明らかにする。チーム内および空間全体での知識生産における分業についての調査を可能にするデータセットを作成したところ、分散したチームメンバー間での共同作業は、体系化の進んだ知識が関わる後期の技術的な作業が中心となっていることが見いだされた。一方、遠隔チームのメンバーは、知識が言葉に表されていない状況では、新たなアイデアの着想や研究設計など、概念的な作業において力を合わせる可能性が低かった。我々は、近年のデジタル技術の目覚ましい進歩にもかかわらず、遠隔チームはメンバーの知識を統合して新たな破壊的アイデアを生み出す可能性が低いと結論する。

