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神経科学:ドーパミンは頭の向きを決める運動時に頭方向ニューロンの可塑性を促す
Nature 612, 7939 doi: 10.1038/s41586-022-05485-4
情報をシナプス結合の重みで保存する神経ネットワークでは、感度と安定性の間にトレードオフがある。新規情報を取り込むには結合は可塑的でなくてはならないが、可塑性が強過ぎれば保存していた情報が壊れてしまう可能性が出てくる。1つの可能な解決法は、課題特異的な情報が豊富な期間に限って「いつ学習するか」信号に基づいて可塑性を許すという方法だろう。我々は、新たな空間情報が入ってくるとき(つまり、動物が移動しているとき)に、ドーパミンが脳の空間マップの更新を許す「いつ学習するか」信号を出すと推定した。今回我々は、ショウジョウバエ(Drosophila)が旋回して頭の向きを変える時、ハエの頭方向ネットワークを神経支配しているドーパミンニューロンが特異的に活性化していることを示す。さらに、ドーパミンニューロンの活性は、頭の旋回速度に従って刻一刻と増減していた。ドーパミン放出と視覚的合図が組み合わさると、頭方向細胞への合図の影響が持続的に強まった。逆に、これらのドーパミンニューロンを抑制すると、合図の影響が減少した。この機構により、頭の向きを決める運動によって頭方向情報が豊富に流れてくる時期に学習が加速し、他の時期には学習率が低く抑えられて保存された情報を守ることができる。今回の結果は、学習率の高い時期が情報流入率が高い時期と一致する明確な時期に、脳が空間学習を凝縮して行う仕組みを示すものである。

