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生態学:環境DNAから明らかになった200万年前のグリーンランドの生態系

Nature 612, 7939 doi: 10.1038/s41586-022-05453-y

後期鮮新世および前期更新世(360万~80万年前)の気候は、将来の温暖化で予測されている気候に近いものであった。古気候の記録からは、強い極域増幅と、現代よりも11~19°C高い年平均気温が明らかになっている。この時代の北極に生息していた生物群集は、化石が極めて少ないため、いまだほとんど知られていない。今回我々は、年代が約200万年前と推定される、北グリーンランドのKap København累層の、豊かな動植物群集の存在を示す古代の環境DNA(eDNA)の記録について報告する。この記録は、ヤマナラシ、カバノキ、クロベなどの高木に加えて、北極および北方のさまざまな低木および草本が混生した植生の、疎な北方林生態系を示しており、これらの植物の多くは、この地域で大型化石や花粉の記録からこれまでに発見されたことがないものであった。このDNA記録からはまた、ノウサギの存在、そして、マストドン、トナカイ、齧歯類、ガンなどの動物に由来するミトコンドリアDNAの存在が確認された。これらの動物はいずれも、現代および後期更新世の近縁生物の祖先である。カブトガニや緑藻類などの海生種の存在は、当時の気候が現代よりも温暖であったことを支持している。今回再構築された生態系は、現代には類似のものが存在しない。こうした古代eDNAの残存はおそらく、それが鉱物の表面に結合したことに関連する。我々の知見は、遺伝学研究の新たな分野を開くものであり、古代eDNAを用いることで、200万年前の生物群集の生態や進化の追跡が可能であることを実証している。

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