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腫瘍免疫学:がんにおいて腫瘍の好中球のフェロトーシスは免疫抑制を引き起こす

Nature 612, 7939 doi: 10.1038/s41586-022-05443-0

フェロトーシスは調節された細胞死の一種だがアポトーシスとは異なっていて、調節性酸化還元機構の協調不全の結果として多価不飽和リン脂質が大量に過酸化されることによって引き起こされる。フェロトーシスを誘発する物質は、in vitroでの腫瘍細胞の殺傷にかなりの有効性を示すことが明らかになっているが、実験動物モデルでは、注目すべき例外として免疫不全マウスがあるものの、明らかな成功例はない。これは、フェロトーシスが免疫細胞に及ぼす影響がいまだによく分かっていないことを示している。病理学的に活性化された好中球(PMN)は骨髄由来免疫抑制細胞(PMN-MDSC)と呼ばれ、抗腫瘍免疫の主要な負の調節因子である。今回我々は、腫瘍微小環境中にあるPMN-MDSCが、フェロトーシスによって自発的に死ぬことを見いだした。フェロトーシスはPMN-MDSCの存在量を減少させるが、酸素を含んだ脂質の放出を促し、ヒトとマウスのT細胞の活性を制限する。免疫能力のあるマウスでフェロトーシスを遺伝学的・薬理学的に阻害すると、PMN-MDSCの免疫抑制活性が消失し、腫瘍の進行が抑えられ、免疫チェックポイント阻害との相乗的な働きにより腫瘍の増殖が抑制された。これとは対照的に、免疫能力のあるマウスでフェロトーシスを誘発すると、腫瘍増殖が促進された。このように、フェロトーシスは腫瘍微小環境内にあるPMN-MDSCの独特な免疫抑制機構であって、標的化が可能であり、薬理学的に調節して腫瘍の進行を制限することができる。

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