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生物物理学:哺乳類脳V-ATPアーゼの非常にゆっくりしたモード切り替えを介する調節

Nature 611, 7937 doi: 10.1038/s41586-022-05472-9

液胞型アデノシントリホスファターゼ(V-ATPアーゼ)は、起電性の回転型メカノエンザイムで、構造的にはF型ATPシンターゼに似ている。V-ATPアーゼはATPを加水分解して、非常に多くの細胞過程が使う電気化学的プロトン勾配を確立する。ニューロンでは、全ての神経伝達物質をシナプス小胞に積み込むためのエネルギーは、シナプス小胞1個当たり約1分子のV-ATPアーゼによって供給される。我々は、この真に単一分子的な生物学的過程を解明するために、哺乳類脳の1個のシナプス小胞で、1個のV-ATPアーゼによる起電性プロトンポンピングについて調べた。本論文では、細菌の持つV-ATPアーゼホモログの回転の観察と厳密なATP-プロトン共役の推定からは、V-ATPアーゼは時間的に途切れなくプロトンを輸送していることが示唆されるが、実際にはそうでないことを明らかにする。V-ATPアーゼには非常に寿命の長い3つのモード、すなわち、プロトン輸送状態と不活性状態とプロトン漏出状態があり、それらが確率論的に切り替えられる。注目すべきことに、プロトン輸送の直接観察によって、生理的に意味のある濃度のATPは、ATPアーゼに本来備わっているプロトン輸送速度を調節しないことが分かった。ATPは、プロトン輸送モードが切り替えられる確率を介して、V-ATPアーゼの活性を調節している。これとは対照的に、電気化学的プロトン勾配は、プロトン輸送速度、それに輸送モードと不活性モードの切り替えを調節している。モード切り替えの直接的な結果は、シナプス小胞の電気化学的勾配の「全か無か」型の確率論的変動である。これは、プロトンを原動力とする二次的な神経伝達物質の能動的積み込みに偶然性をもたらすと考えられるので、神経伝達に重要な意味を持つ可能性がある。今回の研究では、非常にゆっくりしたモード切り替えの機構的、また生物学的重要性が明らかにされ、重要視されている。

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