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コロナウイルス:廃水の塩基配列解読から明らかになったSARS-CoV-2変異株の早期の潜在的な伝播

Nature 609, 7925 doi: 10.1038/s41586-022-05049-6

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は拡散と進化を続けているため、新たに出現する変異株を早期に検出することは公衆衛生的介入にとって重要である。臨床検査によるウイルス系統別の有病率の推定は、特に資源や試験への参加、検査能力・塩基配列解読の能力が限られた地域では大規模に実行できず、偏りが生じる可能性もある。廃水中のSARS-CoV-2 RNA濃度は地域の感染動態をうまくたどり、臨床検査よりも推定量の偏りが少ないことが示されている。廃水中のウイルスゲノム塩基配列を追跡することで、地域の有病率の推定値が改善され、新たに出現した変異株が検出されると考えられる。しかし、混合試料では塩基配列データは質が低くてウイルス系統の相対量を推定できないという2つの要因によって、廃水でのゲノム監視は制限されている。今回我々は、これらの重要な問題を解決し、広大な大学キャンパスという制御された環境と、その周辺のより広い行政区画において、295日間の廃水試料と臨床試料の高分解能塩基配列解読の取り組みを行った。我々は、廃水から複数のウイルス株を完全に特定する、改良されたウイルス濃縮プロトコルとデコンボリューションソフトウエアを開発して配備した。その結果、廃水試料からは最大14日前に、新たに出現した懸念される変異株が検出され、臨床試料のゲノム監視では捕捉されなかったウイルス拡散の複数の実例が特定された。我々の研究は、SARS-CoV-2変異株の早期検出と潜在的な伝播の特定を可能にする、廃水でのゲノム監視というスケーラブルな解決策をもたらすものである。

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