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物性物理学:電流によるカイラル反強磁性秩序の垂直二値状態のスイッチング

Nature 607, 7919 doi: 10.1038/s41586-022-04864-1

物質の磁気状態の電気的制御は、情報技術の基礎やスピントロニクス現象の理解の基礎となる。スピン–軌道トルクによって、磁気秩序を電気的に操作する効率的な機構が得られる。特に、ナノスケール強磁性ビットにおける垂直磁化のスピン–軌道トルクスイッチングによって、安定で信頼性の高い低電力のメモリーや計算の開発が可能になっている。同様に、反強磁性スピントロニクスについては、高密度集積や超高速動作の潜在的利点を考慮すると、垂直配置における反強磁性秩序の電気的な二方向スイッチングが大きな影響を及ぼす可能性がある。今回我々は、反強磁性体の垂直二値状態のスピン–軌道トルクスイッチングを実験的に実現したことを報告する。我々は、カイラル反強磁性体であるMn3Snを用いた。この材料は、カイラル反強磁性状態におけるクラスター磁気八極子の強的秩序に起因して、磁化フリーの異常ホール効果を示す。我々は、分子線エピタキシー法によって重金属/Mn3Snヘテロ構造を作製し、エピタキシャル面内引張ひずみを用いて八極子の垂直磁気異方性を導入した。また我々は、読み出しとして異常ホール効果を用いることによって、15 MA cm−2未満の低臨界電流密度で、厚さ30 nmのMn3Sn膜において垂直八極子偏極の100%スイッチングを実証した。電流誘起スピン蓄積の偏極方向と八極子の偏極方向が垂直であることによって、決定論的二方向スイッチング過程のスピン–軌道トルク効率が持続的に最大になることも、理論によって明らかになった。今回の研究結果から、反強磁性スピントロニクス研究の重要な基礎が得られる。

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