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コロナウイルス:SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性解析と抗ウイルス感受性

Nature 607, 7917 doi: 10.1038/s41586-022-04856-1

最近、多数の変異を有する重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)オミクロン(B.1.1.529系統)変異株が出現したことで、これらの変異株に対する、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現在用いられているワクチンや治療用モノクローナル抗体、抗ウイルス薬の有効性低下の懸念が生じている。最初に見つかったオミクロン系統であるBA.1株は多くの国で流行したが、最近、BA.2株が少なくとも68か国で優勢となっている。今回我々は、ヒトACE2発現マウスおよびハムスターにおいて、BA.2の臨床分離株の複製能と病原性を評価した。従来株(WK-521)をバックボーンとしてBA.1やBA.2のスパイクタンパク質を発現させたキメラ組換えSARS-CoV-2株を用いた最近のデータとは異なり、マウスやハムスターにおいてBA.2およびBA.1の臨床分離株は、増殖性と病原性について同等であり、また、初期のSARS-CoV-2株と比較して病原性が低いことが分かった。さらに、COVID-19から回復した人やワクチン接種者から採取した血漿では、従来株やデルタ変異株と比べて、BA.2に対する中和活性が著しくかつ有意に減少していた。いくつかの治療用モノクローナル抗体(REGN10987とREGN10933の併用、COV2-2196とCOV2-2130の併用、S309)や抗ウイルス薬(モルヌピラビル、ニルマトレルビル、S-217622)は、BA.2に感染したハムスターの呼吸器におけるウイルスの増殖を抑制した。これらの結果は、齧歯類でのBA.2の増殖能や病原性はBA.1と同等であり、いくつかの治療用モノクローナル抗体や抗ウイルス薬がオミクロンBA.2変異株に対して有効であることを示唆している。

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