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無機化学:人工合成した立方体型[Mo3S4Fe]錯体のFeを反応点とする窒素還元反応

Nature 607, 7917 doi: 10.1038/s41586-022-04848-1

自然界における窒素(N2)固定は、窒素を生物が利用できる形態へ変換し供給するのに不可欠な過程であり、ニトロゲナーゼと呼ばれる酵素によって触媒される。この酵素反応の触媒活性部位として働く補因子は、特異な構造の遷移金属–硫黄–炭素クラスター錯体[(R-ホモクエン酸)MoFe7S9C](FeMoco)であり、硫黄に囲まれた鉄(Fe)原子がN2を捕捉し還元すると推定されている。FeMocoのモデル化合物となる金属–硫黄クラスター錯体は、50年近く研究されており、うち数例はN2と結合できることが示されているものの、これまでに合成された金属–硫黄クラスター錯体やタンパク質から抽出したFeMocoはいずれも、N2の還元を実現できていない。今回我々は、人工合成した立方体型[Mo3S4Fe]錯体が、Fe原子を用いてN2分子を捕捉し、過剰なナトリウムとクロロトリメチルシリルの存在下で、N2の還元的シリル化反応を触媒してN(SiMe3)3を生成することを示す。今回の結果は、適切に合成した金属–硫黄クラスター錯体がN2を触媒的にシリル化できることを示すとともに、FeMocoがN2を捕捉して活性化する過程と同様に、硫黄に囲まれた環境においてFe原子がN2を還元できることを実証している。

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