材料科学:キラル分子インターカレーション超格子
Nature 606, 7916 doi: 10.1038/s41586-022-04846-3
キラル誘起スピン選択性(CISS)の発見によって、外部磁場を用いずにスピン配向を操作する可能性が開かれるとともに、新しいスピントロニクスデバイス設計が可能になった。固体材料や固体デバイスにCISSを導入するために多くの方法が探索されているが、これまで得られた系は、高い不均一性、低いスピン選択性、限られた安定性といった問題があることが多く、ロバストなスピントロニクスデバイスの形成が困難であった。今回我々は、CISSを調べるためのロバストな固体キラル材料プラットフォームとして、新たなクラスのキラル分子インターカレーション超格子(CMIS)を報告する。このCMISは、層状二次元原子結晶(2DAC;TaS2やTiS2など)に、選択されたキラル分子(R-α-メチルベンジルアミンやS-α-メチルベンジルアミンなど)をインターカレートすることによって作製された。X線回折研究および透過型電子顕微鏡研究によって、結晶性原子層と自己集合キラル分子層が交互に重なった高秩序超格子構造が実証された。円偏光二色性研究からは、右手系(R-)CMISと左手系(S-)CMISについて、キラリティーに依存した明確な信号が示された。さらに我々は、得られたCMISをスピンフィルター層として用いることによって、キラリティーに依存する独特なトンネル電流を有するスピン選択的トンネル接合を作製し、300%を超えるトンネル磁気抵抗比と60%を超えるスピン偏極率を達成した。電子的特性を広く調整可能な2DACファミリーの規模は大きく、設計可能な構造モチーフを構成するキラル分子の選択肢が多いため、CMISは、CISS効果の研究や、新しいスピントロニクスデバイス用としてのそれらの可能性の獲得のための豊富な人工キラル材料ファミリーになる。

