Article
構造生物学:胆汁酸の輸送体でありB型肝炎ウイルス受容体でもあるNTCPの構造
Nature 606, 7916 doi: 10.1038/s41586-022-04845-4
B型肝炎ウイルス(HBV)の慢性感染者は、世界全体で2億9000万人を超えている。HBVの慢性感染は肝硬変や肝細胞がんの主要な原因となっており、それによる死亡者は毎年82万人に上ると推定されている。HBVの感染が成立するためには、ウイルスエンベロープにある大型の糖タンパク質(LHBと呼ばれる)と、宿主側の侵入受容体であるナトリウム・タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP;血液から肝細胞へと胆汁酸を運ぶナトリウム依存性輸送体)との分子間相互作用が必要である。しかし、ウイルスと輸送体との相互作用の分子基盤は、これまでほとんど解明されていなかった。今回我々は、ヒト、ウシ、ラットのNTCPのアポ状態の構造をクライオ電子顕微鏡を用いて明らかにした。これらの構造から、膜を貫通するトンネルが存在し、基質の輸送経路となっている可能性があることが分かった。さらに、LHBのpreS1ドメインをミリストイル化したペプチドの存在下で調べたヒトNTCPのクライオ電子顕微鏡構造と、変異実験および輸送活性解析の結果を総合すると、NTCPのトンネルの細胞外側の開口について、preS1ドメインと基質である胆汁酸が競合するという結合様式が示唆される。我々のpreS1ドメインの結合解析によって、HBVに感染しにくくなる天然のヒトNTCP変異が機構の観点から説明された。これらの知見によって、HBVの認識の構造的枠組みが明らかになり、また哺乳類のNTCPによるナトリウムに依存した胆汁酸の輸送機構が解明された。

