生理学:ATGLはヒドロキシ脂肪酸の脂肪酸エステル生合成酵素である
Nature 606, 7916 doi: 10.1038/s41586-022-04787-x
脂肪酸(FA)とヒドロキシ脂肪酸(HFA)がエステル結合した分岐FAHFA(fatty acid esters of hydroxy fatty acid)は最近発見された脂質で、酵母から哺乳類まで保存されている。サブファミリーの1つであるPAHSA(palmitic acid esters of hydroxy stearic acids)には、抗炎症性と抗糖尿病性がある。インスリン抵抗性のヒトとマウスでは、皮下脂肪組織や血清中のPAHSAレベルが低下しており、PAHSAを投与すると、耐糖能とインスリン感受性が改善し、肥満症や糖尿病、免疫性疾患での炎症が軽減する。しかし、in vivoでFAHFAの生合成を担っている酵素は、まだ明らかにされていない。今回我々は、ケミカルバイオロジーとプロテオミクスを用い、FAHFAの生合成酵素候補として脂肪トリグリセリドリパーゼ[ATGL、別名PNPLA2(patatin-like phospholipase domain containing 2)]を特定した。組換えATGLは、トリグリセリド(TG)またはジグリセリドからのFAによってHFAをエステル化するアシル基転移反応を用いて、FAHFAを生成することが分かった。野生型のATGLを過剰発現させるとFAHFAの生合成が増加したが、触媒活性のないATGLでは増加しなかった。ATGLの化学的阻害やAtglの遺伝的欠失では、FAHFAの生合成が阻害され、FAHFAとFAHFA-TGのレベルが低下した。また、脂肪組織特異的にAtglをノックアウトしたマウスの脂肪組織では、内在性と新生のFAHFAやFAHFA-TGのレベルが80~90%低かった。ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)活性の上昇によるTGレベルの増加は、FAHFA生合成を活発に促進し、DGAT活性が低下するとFAHFA生合成が抑制されたため、TGがFAHFA前駆体であることが裏付けられた。ATGLの生合成トランスアシラーゼ活性はヒトの脂肪組織でも見られるため、臨床的に意義がある可能性を明確に示している。まとめると、今回発見された、哺乳類でFAHFAのエステル結合形成を触媒する生合成酵素は、我々の知る限り初めてのものである。ATGLのリパーゼ活性はよく知られているものの、本研究のデータは、ATGLのトランスアシラーゼ活性が生物学的に重要であることを示すパラダイムシフトを立証している。

