微生物学:抗生物質が腸内細菌に及ぼす巻き添え被害の解明
Nature 599, 7883 doi: 10.1038/s41586-021-03986-2
抗生物質は病原菌と闘うために使用されるが、共生細菌も標的となるため、腸内細菌相の組成を乱して、ディスバイオーシスや疾患の原因となる。この巻き添え被害(collateral damage)はよく知られているにもかかわらず、さまざまなクラスの抗生物質が腸内細菌に及ぼす抗菌スペクトルの特徴はあまり明らかになっていない。今回我々は、以前にヒトの腸マイクロバイオームの代表的な38種に対してスクリーニングした1000種類以上の薬剤の中から、さらに144種類の抗生物質について、その特徴を解析した。その結果、キノロン系には世代依存性があり、β-ラクタム系には系統発生学的な依存性がないなど、抗生物質がクラスによって異なる阻害スペクトルを示すことが明らかになった。マクロライド系とテトラサイクリン系は、どちらも静菌作用を持つプロトタイプのタンパク質合成阻害剤であり、調べたほぼ全ての共生細菌を阻害したが、いくつかの種については殺傷もした。殺傷される細菌は、阻害される細菌よりも容易に、in vitroで群集から除去された。この種特異的な殺菌活性は、殺菌作用クラスと静菌作用クラスという長い間使われてきた抗生物質の区別に疑問を呈すものであり、また、マクロライド系が動物やヒトの腸マイクロバイオームに及ぼす強力な効果に対する説明となる可能性がある。我々は、このようなマクロライド系とテトラサイクリン系による巻き添え被害を軽減するために、豊富に存在するバクテロイデス属(Bacteroides)の種に対する抗生物質活性に特異的に拮抗するが、関連する病原菌に対する抗生物質活性には拮抗しない薬剤をスクリーニングした。こうした拮抗作用を持つ薬剤は、ヒト糞便由来の群集やノトバイオートマウスにおいてエリスロマイシン投与からバクテロイデス属の種を選択的に保護した。これらの知見は、共生細菌に対する抗生物質の活性スペクトルを明らかにするとともに、そうした抗生物質の腸内細菌相に対する有害作用を回避するための戦略を示唆している。

