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腫瘍生物学:Apc変異型細胞は腸での腫瘍イニシエーションにおいて超競合者として機能する
Nature 594, 7863 doi: 10.1038/s41586-021-03558-4
腸幹細胞(ISC)のニッチにおけるWNTのアゴニストとアンタゴニストの精巧な平衡状態は、腸の内側を覆う細胞の迅速な再生を担うISC区画の維持に重要である。ヒトの全大腸がんの約80%に見られる腫瘍抑制因子遺伝子APCの変異によってこのWNTバランスが崩れると、WNT経路の無制限の活性化につながる。Apc変異型細胞は、野生型ISCよりも競合で優位になることがこれまでに立証されている。その結果、Apc変異型ISCは、陰窩内の全ての野生型幹細胞との競合に勝つことが多く、それによって腸組織にクローンが定着し、がんのイニシエーションが起こる。しかし、Apc変異型ISCの相対的な適応度の上昇が細胞に固有の特徴のみに関わるのか、また、Apc変異型細胞が近接する野生型細胞の排除に積極的に関与するのかは分かっていない。今回我々は、Apc変異型ISCがWNTアンタゴニストを分泌して、近接する野生型ISCの分化を誘導することにより、真正の超競合者(supercompetitor)として機能することを示す。塩化リチウムは、GSK3βの阻害によるWNTの下流の活性化を介して野生型ISCをWNTアンタゴニストに非感受性にすることで、Apc変異型クローンの増殖と腺腫の形成を防いだ。我々の研究は、健康な細胞の適応度を高めて前がん状態のクローンの増殖を制限することが、高リスクの人でがんの形成を制限する強力な戦略となる可能性を示唆している。

