免疫学:RAGによるスキャニングのためのIgh遺伝子座の生理的収縮はループ押し出しにより引き起こされる
Nature 590, 7845 doi: 10.1038/s41586-020-03121-7
RAGエンドヌクレアーゼは、B細胞前駆細胞でIghのV(D)J組換えを開始させる。その際、RAGエンドヌクレアーゼはまず、組換え中心(RC)内部のJH組換えシグナル配列(RSS)に結合し、次にコヒーシンを介したループ押し出しによって提示された上流のクロマチンを直線的にスキャンして、収斂方向のD-RSSを探す。収斂方向のRSSと潜在的RSSの使用は、長距離のRAGスキャニングに固有である。DJH-RC-RSSから上流の収斂方向のVH-RSSに向けたRAGによるスキャニングは、D近傍のCTCF結合エレメント(CBE)によって妨げられる。初代B細胞前駆細胞では、機序は不明だがVH座の収縮が起こり、それによって離れた位置にあるVHがDJH-RCに接近できると考えられている。今回我々は、マウスの初代B細胞前駆細胞で、2.4 MbのVH座全体を反転させると、座の収縮は変わらずに起こるものの、VH-RSSと本来は収斂方向の潜在的RSSの再編成が共に起こらなくなることを明らかにする。さらにこの反転は、正常なら逆方向の潜在的VHRSSの使用と収斂方向の複数のCBEドメインを通ってテロメアに至るVH座を越えたRAGスキャニングとを共に活性化した。まとめると、これらの知見は、初代B細胞前駆細胞でのCBE阻害の広範な脱調節が、ループ押し出しを介したVH座のRAGによるスキャニングを促進することを示唆している。さらに、VH座の収縮とRAGによるスキャニングの起こらないv-Abl-形質転換B細胞前駆細胞株と比較すると、初代B細胞前駆細胞ではコヒーシン放出因子WAPL(wings apart-like protein homolog)の発現が減少していることも分かった。これと一致して、v-Abl-形質転換細胞株のWAPLを枯渇させるとVH座の収縮とRAGスキャニングの両方が活性化されることも、VH座の収縮機構にループ押し出しが関わっていることを示唆している。

