物性物理学:トポロジカル反強磁性状態の電気的操作
Nature 580, 7805 doi: 10.1038/s41586-020-2211-2
トポロジカルに非自明なバンド構造によって生じる現象の電気的操作は、トポロジーによる保護を使って次世代技術を開発するのに不可欠である。ワイル半金属は、低エネルギー準粒子としてギャップレスなワイルフェルミオンを有する三次元系である。ワイル半金属には、トポロジーによって保護されたワイルノードに由来する、巨大な異常ホール効果やカイラル異常などの、乱れに強いエキゾチックな特性が多数ある。こうした現象を操作するには、磁性ワイル半金属が、ブリルアンゾーンのワイルノードの位置を制御するのに有用であると思われる。さらに、反強磁性ワイル金属を電気的に操作できれば、反強磁性スピントロニクスの使用が促進されて、超高速・高密度のデバイスが実現すると思われる。しかし、ワイル半金属の電気的制御はこれまで報告がなかった。今回我々は、室温かつゼロ磁場で異常ホール効果を示す反強磁性ワイル金属Mn3Snの多結晶薄膜を用いて、トポロジカル反強磁性状態の電気的制御(電気的スイッチング)と異常ホール効果によるその検出を実証する。我々は、Mn3Sn層と非磁性金属層から構成される多層デバイスを使って、非磁性金属層に約1010〜1011 A m−2の電流を流すことで磁気スイッチングが起こり、ホール電圧が大きく変化することを見いだした。さらに、バイアス磁場に沿った書き込み電流の極性と非磁性金属のスピンホール角の符号(Ptでは正、Cuではほぼ0、Wでは負)によって、このホール電圧の符号が決まることも確認された。注目すべきことに、反強磁性ワイル金属での電気的制御は、従来の強磁性金属で用いられているのと同一の磁化反転手法を用いて実現される。今回の結果は、トポロジカル磁性と反強磁性体スピントロニクスにおけるさらなる科学的・技術的発展につながるであろう。

