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物性物理学:反強磁性トポロジカル絶縁体の予測と観測

Nature 576, 7787 doi: 10.1038/s41586-019-1840-9

磁性トポロジカル絶縁体は、非自明なバンドトポロジーと磁気秩序を併せ持つナローギャップ半導体物質である。非磁性トポロジカル絶縁体とは異なり、磁性トポロジカル絶縁体は、表面でギャップが開く可能性があるため、量子異常ホール効果やカイラルマヨラナフェルミオンなど、スピントロニクスに応用できる可能性がある多くのエキゾチック現象が生じ得る。これまで、磁性トポロジカル絶縁体は、非磁性トポロジカル絶縁体に3d遷移金属元素をドープすることによってのみ作製されてきた。しかし、そうした手法では、物質の磁気的特性や電気的特性が非常に不均一になり、重要な効果の観測が非常に低い温度に制限される。本質的な磁性トポロジカル絶縁体(化学量論的な高秩序磁性化合物)があれば、この問題に対する理想的な解決策となるが、そうした物質はこれまで見つかっていない。今回我々は、層状ファンデルワールス化合物MnBi2Te4において反強磁性トポロジカル絶縁体が実現されることをab initio計算によって予測し、さらにさまざまな実験手法を用いて確認した。MnBi2Te4は反強磁性秩序を示すため、時間反転対称性と単純格子並進対称性の組み合わせに関して不変であり、ℤ2位相幾何学的分類が可能になる。MnBi2Te4はℤ2 = 1となり、トポロジカルに非自明な性質を裏付けている。実験では、対称性を破るMnBi2Te4の(0001)面がトポロジカル表面状態において大きなバンドギャップを有することが示された。この特性によって、いずれは多くの基本現象、中でも量子化された磁気電気結合やアクシオン電気力学の観測が可能になると、我々は予想する。それ以外にも、量子異常ホール効果やカイラルマヨラナフェルミオンなどのエキゾチック現象が、これまでよりはるかに高い温度で観測できるようになる可能性がある。

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