統計物理学:カオス的で非階層的な三体問題の統計解
Nature 576, 7787 doi: 10.1038/s41586-019-1833-8
三体問題は、天体物理学におけるおそらく最も古い未解決の問題であり、一般的な解析解は何世紀にもわたって得られていない。摂動論がさまざまに実行されて、パラメーター空間の一部で解が得られているが、質量あるいは距離間隔の階層が存在する場合だけである。数値積分からは、束縛された非階層的なニュートン力学的点粒子の三重星系は、ほとんどの場合1個の脱出する星と安定な束縛された連星に分解することが示されているが、三体問題のカオス的な性質によって、初期条件を最終結果へ決定論的に写像する扱いやすい解析公式の導出は妨げられている。しかし、カオスは、エルゴード性を仮定する動機ともなっており、得られた結果の分布は、利用できる位相体積全体にわたって一様であることが示唆されている。今回我々は、非階層的な三体問題の統計解を報告する。これは、エルゴード仮説を使って導かれたもので、保存される運動積分が与えられると、結果(例えば連星の軌道要素)の分布が閉じた形になる。今回の結果の分布と数値三体積分の大きなアンサンブルを比較したところ、「共鳴的な」遭遇(カオス的な発展が生じる散乱の約50%)に限定すれば、それらがよく一致することが見いだされた。また、今回の散乱実験の分析からは、「スクランブル」(対になった連星が存在しない期間)が、非階層的な三重星系をエルゴード化する重要な力学的状態であることが特定された。我々が予測する、残った連星の離心率の一般的に超熱的な分布には、多くの天体物理学的シナリオにとって注目すべき応用がある。例えば、球状星団中に力学的に形成された非階層的な三重星系は、ブラックホール合体の主要な形成チャネルであるが、その結果生じる重力波の発生率と諸特性は、分解後の離心率分布に依存する。

