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細胞シグナル伝達:細胞膜V-ATPアーゼは発がん性RASが誘発するマクロピノサイトーシスを制御する
Nature 576, 7787 doi: 10.1038/s41586-019-1831-x
RASの発がん性活性化は、代謝依存性の独特なセットの獲得と結び付いており、こうした依存性は腫瘍細胞の適応度に寄与している。発がん性RASを発現する細胞は、マクロピノサイトーシスと呼ばれる液相取り込み機構を介して細胞外タンパク質を取り込み、分解することができる。このRAS依存的過程が、栄養が制限されている状況下で腫瘍細胞の増殖を維持するのに使える遊離アミノ酸の生成に果たす役割が、次第に認められつつある。しかし、発がん性RASによるマクロピノサイトーシスの誘導を仲介する分子段階については、ほとんど分かっていない。今回我々は、液胞ATPアーゼ(V-ATPアーゼ)が、RASにより誘導されるマクロピノサイトーシスに必須の調節因子であることを明らかにした。発がん性RASは、炭酸水素塩依存性の可溶性アデニル酸シクラーゼによるプロテインキナーゼAの活性化を必要とする経路を介して、細胞内の膜から細胞膜へのV-ATPアーゼの輸送を促進する。細胞膜でのV-ATPアーゼの集積はRAC1のコレステロール依存的な細胞膜への結合に必要であり、この結合は膜ラッフリングの刺激とマクロピノサイトーシスが起こるための前提条件である。これらの観察結果は、V-ATPアーゼのトラフィッキングと、マクロピノサイトーシスによる栄養供給との間の関連性を確証するもので、この関連はRAS変異型腫瘍細胞の代謝適応能力削減に利用できる可能性がある。

