Article

物性物理学:Bi2Te3/MnBi2Te4ヘテロ構造におけるディラック点での大きな磁性ギャップ

Nature 576, 7787 doi: 10.1038/s41586-019-1826-7

磁性ドープしたトポロジカル絶縁体では、量子異常ホール効果(QAHE)が可能になり、無損失の電荷輸送に応用される量子化されたエッジ状態が得られる。こうしたエッジ状態は、ディラック点での磁性エネルギーギャップに存在するが、これまでこのギャップを直接観測しようとするいかなる試みも成功していない。このギャップの観測は、これまで強磁性キュリー温度TCより1〜2桁低い温度でしか生じていないQAHEの限界を克服するのに不可欠と考えられている。今回我々は、低温光電子分光法を使って、MnドープBi2Te3の磁性ギャップを明確に明らかにする。このギャップは、強磁性の面外スピンテクスチャーを示し、TC以下でのみ開く。意外なことに、我々の分析では、1 Kにおいて最大90 meVという大きなギャップサイズが明らかになった。これは、理論予測よりも5倍以上大きい。我々は、マルチスケール分析を用いて、このギャップサイズの増大が、Mnドーピングによって生じた著しい構造変化に起因することを示す。すなわち、乱れた不純物系ではなく、7層のMnBi2Te4と5層のBi2Te3の自己組織化した交互シーケンスが形成されることが分かった。これによって、波動関数の重なりと磁性ギャップのサイズが増大する。MnドープBi2Se3とMnドープSb2Te3は同様のヘテロ構造を形成するが、Bi2Se3では、非磁性ギャップのみが形成され、その磁化は表面内にある。これは、MnドープBi2Te3と比べてスピン–軌道相互作用が小さいことで説明される。今回の研究結果は、トポロジカル絶縁体の無損失輸送の室温での応用を推進するのに極めて重要な知見を提供している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度