Article

考古学:先史時代の芸術における最古の狩猟場面

Nature 576, 7787 doi: 10.1038/s41586-019-1806-y

ヒトには、物語を創作し、伝え、楽しむための適応的な素質が備わっているようである。先史時代の洞窟芸術は、物語を作り伝える行為として最古のものに関し、我々が持ち得る最も直接的な手掛かりをもたらす。そうした洞窟芸術は、物語の構成要素、すなわち空間的に互いに近接する一連のヒトや動物の姿の明確な具象的描写を取り上げた「場面」の形をとっており、そうした場面からは描かれたヒトや動物の間で繰り広げられている出来事を推察することができるようになっている。ヨーロッパにおける後期旧石器時代の洞窟芸術には、ヒトと動物が認識可能な場面で相互作用する様子や、獣人を表す既知最古の画像が描かれている。獣人とは、ヒトと動物の性質を併せ持つ抽象的存在で、おそらく何らかの虚構的物語(伝説、宗教的神話、超自然的信仰など)を伝えるものであったと考えられる。こうした創造的表現の記録(約4万年前から約1万年前の完新世の始まりにわたって存在する)において、洞窟芸術に場面が描かれている例は概してまれで年代的に新しく(約2万1000~1万4000年前)、獣人の明確な描写は珍しい。獣人の姿が描かれた最古のものは、ドイツで発見されたネコ科動物の頭を持つヒトの姿である(年代は約4万~3万9000年前)。本論文では、インドネシア・スラウェシ島の鍾乳洞リアン・ブルシポン4(Leang Bulu’ Sipong 4)で発見された1枚の精巧な岩絵について報告する。この岩絵には、イノシシや小型のウシ科動物(アノア)を狩る獣人を表すと見られる姿が複数描かれており、その年代は表面の洞窟二次生成物のウラン系列年代測定によって少なくとも4万3900年前と推定された。この狩猟場面は我々の知る限り、物語を絵で表した記録としては現時点で最古のものであり、世界最古の具象芸術作品である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度