細胞生物学:核を適当な位置に置くことが、抵抗が最小の経路をたどるアメーバ様移動を促進する
Nature 568, 7753 doi: 10.1038/s41586-019-1087-5
後生動物の発生、免疫監視、がんの播種の際に、細胞は複雑な三次元微小環境中を移動する。このような空間は、細胞や細胞外マトリックスがぎっしり詰まっていて、さまざまなサイズの隙間がある迷路ができているが、そうした隙間は移動中の細胞の直径よりも小さいのが普通である。間充織細胞や上皮細胞の大半、また一部のがん細胞(全てではない)は、細胞周囲の組織のタンパク質分解によって移動経路を能動的に作り出す。これとは対照的に、白血球のようなアメーバ様細胞は破壊を伴わない移動運動戦略をとっていて、このような非常に速く動く細胞が、稠密な組織中をどのようにして進んでいくのかが疑問となっている。今回我々は、白血球はすぐ近くにある大きなサイズの孔を試し、それによって最も抵抗の少ない経路の選択が可能になることを明らかにする。こうすることで、白血球は走化性勾配のような方向を示す広域的な合図に効率よく従いながら、局所的な障害物を迂回することができる。孔のサイズの識別を容易にしているのは、核の位置を前側に持っていくことである。こうすることで、細胞はこの最も体積の大きな区画を機械的測定装置として使える。核とそれに緊密に結び付いた微小管形成中心が最大の孔を通過すると、それより小さな孔に入り込んでいた細胞質の突起が引っ込む。こうした収縮を協調させるのが活発に流動している微小管で、微小管を破壊すると、移動中の細胞は統一性を失い、断片化して動き回る細胞質の小片になってしまうことが多い。核の位置を微小管形成中心の前方にもってくるのは、アメーバ様移動の典型的な特徴であり、今回の知見によって、細胞の極性の基本的構成と移動運動戦略が結び付けられた。

