Letter

ウイルス学:HIV-1のエンベロープ糖タンパク質の構造を、smFRETで観察されたウイルス上の状態と結び付ける

Nature 568, 7752 doi: 10.1038/s41586-019-1101-y

HIV-1のエンベロープ糖タンパク質(Env)三量体はHIV-1の細胞への侵入に関わっていて、コンホメーションが動的に変化する。単一分子蛍光共鳴エネルギー移動(smFRET)を使った画像化によって、成熟した融合前のEnvが無傷のウイルス粒子の表面上で、刺激前のコンホメーション(状態1)から標準的な中間体のコンホメーション(状態2)を経て、3個のCD4受容体分子に結合したコンホメーション(状態3)へと移行することが明らかになっている。しかし、現在のところ、これらの状態と既知の構造とをどのように関係付けたらいいのかは分かっていない。HIV-1 Env三量体の構造の特徴付けは、gp140 Envの可溶性でタンパク質分解された三量体の作出によって大きく進展した。このような三量体は、1個のジスルフィド結合、残基559のイソロイシンからプロリンへの置換、残基664での切り詰めによって安定化されている(SOSIP.664三量体)。クライオ(極低温)電子顕微鏡による研究は、HIV-1JR-FL株のC末端を切り詰めたEnvと抗体PGT151との複合体を使って行われた。どちらの方法からも、Envについて同じような構造が明らかになっている。これらの構造は、HIV-1 Envの刺激前の状態1に相当すると考えられてきたが、この説はこれまで直接検証されたことがない。今回我々はsmFRETを用いて、構造研究に用いられたEnv三量体のコンホメーション状態を、無傷のウイルス上にある天然状態のEnvと比較した。現在の高分解能構造を推定する基盤となった構築体は、状態2と3に当たる、変化が進んだ状態のコンホメーションを主に持つことが分かった。従って、smFRETによって存在が突き止められ、多くの広域中和抗体で選択的に安定化されるために免疫原の設計について関心が持たれている、ウイルスEnvの刺激前のコンホメーション(状態1)の構造は、まだ不明ということになる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度