神経科学:内側嗅内皮質での目標ベクトル符号化
Nature 568, 7752 doi: 10.1038/s41586-019-1077-7
海馬と内側嗅内皮質は、近接環境内でのナビゲーションの際に、動物が自身の位置を定位する脳のシステムの一部をなしている。このシステムでは、神経発火と動物の位置・方位との間の相関は明瞭で、そのため各細胞タイプには、場所細胞やグリッド細胞、境界細胞や頭方向細胞といった、単純で説明的な名が付けられている。機能が明らかにされた細胞タイプの数は着実に増えつつあるが、ほとんどの実験が、囲いの中の何もない空所で採餌する齧歯類からの記録に依拠しており、こうした環境は、多くの物体があって幾何的に不規則な自然界とは異なる。別個の複数の物体を含む環境では、動物はこれらの物体の距離と方向についての情報を保持し、このベクトル情報をナビゲーションを導くのに使用することが知られている。理論研究からは、こうしたベクトル演算は、別個の目標物や境界からの距離と方向を用いて動物の位置を決めるニューロンによって行われていると考えられている。しかし、海馬や海馬支脚にはベクトル符号化の性質を持つ細胞が存在する可能性があるものの、空間のより広い神経表現においてもベクトル演算が行われているのか、行われているならそれはどのように行われているのかは、まだ解明されていない。今回我々は、マウスで、内側嗅内皮質ニューロンの多くは、その個体が空間的に限定された目標物から特定の距離と方向にいるときに発火することを示す。これらの「目標ベクトル細胞」は、さまざまな別個の目標物に対して、その物体が試験アリーナのどこにあるかに関係なく同等に同調しており、また点のようなものから大きな表面積を持つものまで、広い範囲の大きさや形のものと同調していた。今回の知見は、ベクトル符号化が内側嗅内皮質での位置符号化の主要な形式であることを示している。

