がん:シンデカン1は膵臓がんにおけるマクロピノサイトーシスの重要なメディエーターである
Nature 568, 7752 doi: 10.1038/s41586-019-1062-1
膵管腺がん(PDAC)は、いまだにあらゆるタイプのがん治療に抵抗性を示し、5年生存率はわずか8%である。PDAC発生における最初期の病変である発がん性KRAS(以後KRAS*と表記)は、このがんの90%以上で認められ、試験段階の薬剤を用いたKRAS*やその代替シグナル伝達経路の阻害は、前臨床試験で有望な成績を挙げている。しかし、マウスモデルにおいてKras*を遺伝的に消失させた後でも、KRAS*非依存的ながんの再発が起こるため、他の因子を共消失させる戦略が必要であることが予想される。複数の発がん過程が細胞表面で開始され、そこでKRAS*は物理的および機能的に相互作用して、悪性形質転換や腫瘍の維持に必須のシグナル伝達を指示する。機能的な細胞表面タンパク質レパートリー[サーフェソーム(surfaceome)]の複雑性に関する手掛かりは、最近まで技術的に制限されており、PDACの場合、KRAS*シグナル伝達におけるPDACサーフェソームの機能と組成の遺伝的制御については、まだほとんど分かっていない。今回我々は、機能的な標的を発見するためのバイアスのないプラットフォームを開発してPDACサーフェソームのKRAS*依存的変化について調べた。その結果、シンデカン1(SDC1;別名CD138)がKRAS*によって細胞表面での発現が上昇するタンパク質の1つであることが明らかになった。SDC1は細胞表面でPDACの細胞増殖を促すために必須の代謝経路であるマクロピノサイトーシスを調節しており、SDC1が細胞表面に局在していることが疾患の維持とプログレッションには不可欠であることが分かった。従って我々の研究は、KRAS*シグナル伝達と、PDACにおいて栄養素を回収する経路を促進する標的化可能な分子との間の機構的つながりを明らかにし、発がん遺伝子誘導性のサーフェソームアノテーションががんに特異的な脆弱性を特定する戦略となることを実証している。

