Letter

量子物理学:雑音のある量子プロセッサーの計算範囲を拡張する誤り軽減

Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-1040-7

量子計算は、古典的な方法とは全く異なる計算パラダイムであり、特定の問題について理論的に証明されている高速化の恩恵を受け、量子系の特性を研究するのに使用できる。しかし、物理的な演算要素である量子ビット(キュービット)が本来的に脆弱であるため、古典計算を上回る優位性を量子計算で達成するには、量子誤り訂正によるフォールトトレランスの実現に、極めて誤り率が低いキュービット演算と相当数の物理キュービットが必要である。一方、最近の理論研究では、雑音を変化させた一連の実験の結果を外挿すると、計算の正確度(量子オブザーバブルの期待値に基づく)を高められることが示されている。今回我々は、超伝導量子プロセッサーでこの誤り軽減プロトコルを実証し、これによってハードウエアをさらに変更することなくその計算能力が高まった。我々は、このプロトコルを適用して、標準的な単一キュービットと2キュービットの実験で誤りを軽減し、次に量子化学と磁性についてのハミルトニアンの変分最適化にその適用を拡張した。そして、インコヒーレントな誤りの抑制が、今回の雑音のあるプロセッサーを使った変分解において、これ以外では実現できない正確度レベルを達成するのに役立つことを効果的に実証した。こうした結果は、誤り軽減法によって、近い将来の量子計算ハードウエアの能力がかなり改善できることを実証している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度