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構造生物学:リポ多糖の細胞表面への一方向輸送の構造基盤

Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-1039-0

グラム陰性細菌は細胞質膜(内膜)と外膜に囲まれていて、外膜は多くの抗生物質の進入を制限する防護壁となっている。外膜の独特な性質は、リポ多糖の存在によるものである。この大きな糖脂質は多数の糖を含んでいて、細胞質で合成される。次いで、1個のタンパク質複合体が膜と膜とをつなぐ橋を形成し、これが内膜から細胞表面へのリポ多糖の輸送を仲介する。タンパク質の橋の内膜側の成分は輸送を駆動するATP結合カセット輸送体からなるが、この輸送体が橋を介して外膜に向かうリポ多糖の一方向移動を確実にしている仕組みはよく分かっていない。今回我々は、5つの成分からなる内膜複合体の2つの結晶構造を報告する。この複合体には、リポ多糖を膜から引き抜き、タンパク質の橋に移すのに必要な全てのタンパク質が含まれている。これらの構造の解析と生化学実験、遺伝学的実験を組み合わせることで、リポ多糖が輸送体のキャビティに入り、橋に到達する経路が明らかになった。また、基質がキャビティから橋へと移動する際に開く必要があるタンパク質ゲートが見つかった。リポ多糖のキャビティへの進入はATPには依存しないが、ゲートを通過して橋へと至る移動はATPを必要とする。我々の発見は、内膜の輸送複合体が、リポ多糖の濃度勾配に逆らう効率の良い一方向輸送を制御する仕組みを説明するものである。

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