Analysis

がん遺伝学:ヒトがんにおける「がんヒストン」変異の広がりつつある全体像

Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-1038-1

エピジェネティック経路の変異は一般的な発がんの駆動要因である。ヒストンは、クロマチンを修飾およびリモデリングする酵素の基本的な基質で、グリオーマ(神経膠腫)、肉腫、頭頸部がん、がん肉腫などの腫瘍で変異している。既知の「がんヒストン」変異はヒストンH3のN末端尾部に起こり、ポリコーム抑制複合体1および2(PRC1およびPRC2)の機能に影響を及ぼす。しかし、他の腫瘍の状況でのヒストン変異の頻度や機能は分かっていない。今回我々は、ヒストンの体細胞変異が、さまざまなタイプの腫瘍の約4%(控えめな推定値)に、そしてヒストンタンパク質の重要な領域に生じていることを示す。変異は、4種類のコアヒストン全てに見られ、N末端尾部および球状のヒストンフォールドドメインの両方に、また、重要な翻訳後修飾を含む残基あるいはその近傍に生じていた。球状ドメインの変異の多くは、SWI/SNF機能を必要としない酵母変異体と相同であるか、ヒストンH2AやH2Bの重要な調節性「酸性パッチ」に生じるか、またはH2B–H4界面を破壊すると予測される。このヒストン変異のデータセットと、今回示した重要なクロマチン機能に対する変異の影響についての仮説は、がんにおけるヒストン変異の広がりつつある役割を調べる際に、クロマチンやがん生物学の分野の情報源や出発点になるはずである。

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