Letter
物性物理学:CoSiにおける長いフェルミアークを持つ非従来型カイラルフェルミオンの観測
Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-1031-8
カイラリティは、物体とその鏡像が一致しないという幾何学的特性で、自然界では、例えば、分子、結晶、銀河、生物に見られる。場の量子論では、質量ゼロの粒子のカイラリティは、そのスピンと運動の方向が平行か反平行かによって定義される。質量ゼロのカイラルフェルミオン、すなわちワイルフェルミオンは90年前に予測されたが、基本粒子としてのその存在は実験的には確かめられていない。しかし、ワイルフェルミオンに似たものが、凝縮物質系の準粒子として観測されている。凝縮物質系では、ワイルフェルミオンに加えて、非従来型の(すなわち、標準模型を超えた)カイラルフェルミオンがいくつか理論的に提案されているが、それらの存在を示す直接的な実験証拠はまだない。本論文では、角度分解光電子放出分光法を使って、2種類の非従来型カイラルフェルミオン、すなわちスピン1フェルミオンと電荷2フェルミオンが、CoSiのフェルミ準位近くのバンド交差点に存在することを明らかにする。 (001)面へのこれらのカイラルフェルミオンの射影は、表面ブリルアンゾーン全体を横切る巨大なフェルミアークでつながっている。これらのカイラルフェルミオンは、結晶対称性によってバルクのブリルアンゾーンの中心または隅で強化され、CoSiは、運動量空間で大きく間隔の空いたカイラルノードを1対のみ持つ、表面フェルミアークが極めて長い系になる。これは、間隔の狭い複数のワイルノード対を持つワイル半金属とは著しく対照的である。今回の結果から、非従来型カイラルフェルミオンの存在が確認され、カイラルフェルミオンに関係する物理特性を研究するプラットフォームが得られた。

