Letter
分子生物学:BRCA1の動員が停止中のRNAポリメラーゼのMYCNによる蓄積を制限する
Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-1030-9
MYCは発がん性転写因子で、活性なプロモーターに広く結合し、RNAポリメラーゼII(RNAPII)による転写伸長を促進する。パラログタンパク質であるMYCNの発現が脱調節すると、神経細胞性腫瘍や神経内分泌腫瘍の発生が引き起こされ、これらは予後が特に悪いことが多い。今回我々は、ヒト神経芽細胞腫でMYCNを活性化すると、MYCの場合と同様に、プロモーターからのRNAPIIの遊離が誘発されることを明らかにする。転写停止部位からのRNAPIIの遊離(停止解除)が失敗すると、MYCNはBRCA1をプロモーター近接領域へと引き寄せる。停止したRNAPIIのMYCNに依存した蓄積はBRCA1の動員によって防がれ、MYCNによる転写活性化が促進される。これは、BRCA1がmRNAキャップ除去複合体を安定化し、MYCNがプロモーター近接領域でのRループ形成を抑制できるようにするという機構を介して起こる。BRCA1の動員にはユビキチン特異的プロテアーゼUSP11が必要で、MYCNのThr58が脱リン酸化されるとUSP11が特異的にMYCNに結合する。USP11、BRCA1、MYCNはクロマチン上で互いを安定化し合い、プロテアソームによるMYCNの分解を防いでいる。BRCA1は発生早期にニューロン前駆細胞で高度に発現されていて、MYCはMYCNほどBRCA1動員能力がない。従って今回の知見は、細胞系譜特異的なストレス応答によって、MYCNが引き起こす腫瘍が脱調節したRNAPII機能に対処可能となることを示している。

