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エピジェネティクス:ヒストンのセロトニン化は、TFIIDのH3K4me3への結合を促進する許容修飾である
Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-1024-7
ヒストンの化学修飾は、遺伝子の転写をはじめ、DNAを鋳型とするさまざまな過程を仲介できる。本論文では、グルタミンのセロトニン化という新たなヒストン翻訳後修飾の存在を示す証拠を示す。この修飾は、セロトニン[別名5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)]を産生する生物のヒストンH3の5番目のグルタミンに生じる(Q5ser)。我々は、組織トランスグルタミナーゼ2(TGM2)は、ヒストンH3リシン4にトリメチル化標識(H3K4me3)を持つヌクレオソームをセロトニン化することができ、in vivoでH3K4me3Q5serという組み合わせを生じさせることを示す。H3K4me3Q5serは哺乳類の組織では遍在的パターンで発現しているが、大量の5-HT産生を行っている2つの臓器系である脳と腸に多く見られた。ヒトセロトニン作動性ニューロン、発生中のマウス脳、セロトニンを産生する培養細胞のゲノム規模の解析では、H3K4me3Q5serヌクレオソームはユークロマチン中に豊富に存在していて、細胞の分化の影響を受けやすく、遺伝子の許容発現(TFIIDのH3K4me3との結合の促進と関連付けられている現象)に相関することが分かった。セロトニン化されないH3変異体を異所性発現する細胞は、H3K4me3Q5ser標的座位の発現が著しく変化しており、分化の異常につながる。これらのデータを総合すると、5-HTには、神経伝達や細胞のシグナル伝達への関与とは別個に、遺伝子の許容発現の仲介における直接的な役割があることが明らかになった。

