乳がん:グルココルチコイドは乳がん転移を促進する
Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-1019-4
がんのプログレッションにおいて生じる、腫瘍内や腫瘍間、転移巣内や転移巣間の多様性(患者内腫瘍不均一性として知られる)は、治療における深刻な障害である。転移はがんの致命的な特質であり、転移カスケードにおいて最も複雑な段階である定着の機構については、ほとんど分かっていない。患者内腫瘍不均一性と転移の両方の根底にある細胞レベルや分子レベルの過程をより明確に理解することは、がんの個別化治療を成功させる上で非常に重要である。今回我々は、患者由来異種移植片マウスモデルにおいて、腫瘍とそれらに対応する転移巣の転写プロファイリングを行った。その結果、がんの部位特異的な表現型が存在し、離れた転移部位においてグルココルチコイド受容体活性が上昇していることが明らかになった。グルココルチコイド受容体は、ストレスホルモンの効果や、抗炎症剤や免疫抑制剤として臨床で広く用いられているこれらのホルモンの合成誘導体の効果を仲介する。我々は、乳がんのプログレッションにおけるストレスホルモンの増加が、離れた転移部位でのグルココルチコイド受容体の活性化、定着の増加、生存率の低下につながることを示す。また、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、リン酸化プロテオーム解析からは、グルココルチコイド受容体が、転移における複数の過程の活性化およびキナーゼROR1の発現上昇に関与していることが分かった。これらは共に生存率の低下と相関していた。ROR1を除去すると転移性増殖が減少し、前臨床モデルで生存期間が延長された。我々の結果は、グルココルチコイド受容体の活性化が、不均一性と転移を増大させることを示しており、これはがん関連合併症を発症した乳がん患者の治療にグルココルチコイドを使用する際は注意が必要であることを示唆している。

