免疫学:NR4A転写因子群は固形腫瘍におけるCAR T細胞機能を制限する
Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-0985-x
ヒトCD19(hCD19)を標的とするキメラ抗原受容体を発現するT細胞(CAR T細胞)は、B細胞悪性腫瘍に対する臨床的有効性が示されている。CAR T細胞は固形腫瘍にはあまり有効ではないが、これは抗原からの慢性的な刺激によって、CAR T細胞が抑制性受容体の発現上昇やエフェクター機能の喪失を特徴とする応答性低下(「疲弊」あるいは「機能不全」)状態に入ることが原因の1つである。今回我々は、固形腫瘍におけるCAR T細胞の疲弊の原因を調べるために、hCD19+腫瘍を移植した担がんマウスにhCD19応答性CAR T細胞を移入した。抑制性受容体のPD-1とTIM3を共発現する疲弊化したCD8+CAR+腫瘍浸潤リンパ球と内因性腫瘍浸潤CD8+リンパ球は、類似した遺伝子発現やクロマチンアクセシビィリティー(開放状態)のプロファイルを示した。こうしたプロファイルは開始転写因子NFAT(nuclear factor of activated T cell)による核内受容体転写因子NR4A1(別名NUR77)、NR4A2(別名NURR1)、NR4A3(別名NOR1)の二次的活性化と関連があった。がん患者や慢性ウイルス感染者のCD8+ T細胞では、NR4A転写因子群が高発現しており、オープンクロマチン領域にNR4A結合モチーフが豊富に見られる。3つ全てのNR4A転写因子を欠損する(Nr4a三重ノックアウト)CAR T細胞は、腫瘍の退縮を促進し、担がんマウスの生存を延長した。Nr4a三重ノックアウトCAR腫瘍浸潤リンパ球は、CD8+エフェクターT細胞に特徴的な表現型と遺伝子発現プロファイルを示した。また、野生型のCAR腫瘍浸潤リンパ球と比較して、Nr4a三重ノックアウトCAR腫瘍浸潤リンパ球では、特有のオープンクロマチン領域に、T細胞の活性化に関与する転写因子NF-κBやAP-1の結合モチーフが豊富に見られた。NR4A転写因子群はT細胞の応答性を低下させる細胞固有のプログラムにおいて重要な役割を担っており、NR4Aの抑制ががん免疫療法の有望な戦略となることが明らかになった。

