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免疫学:ゲノム規模の解析からNR4A1がT細胞機能不全の主要メディエーターであることが明らかになった
Nature 567, 7749 doi: 10.1038/s41586-019-0979-8
T細胞は、自己抗原に出合ったときや、慢性感染もしくは腫瘍微小環境にさらされたときに機能不全に陥る。T細胞の機能は、副刺激の組み合わせシグナルによって厳密に調節されており、負の副刺激が優位になるとT細胞の機能不全が生じる。しかし、この機能不全の原因となる分子機構はよく分かっていない。今回我々は、マウスのin vitro T細胞寛容誘導系を用いて、寛容T細胞におけるゲノム規模のエピジェネティックな特徴と遺伝子発現の特徴を解析し、それらがエフェクターT細胞や制御性T細胞とは異なることを示す。特に寛容T細胞では、転写因子NR4A1が高レベルで安定的に発現していた。NR4A1の過剰発現がエフェクターT細胞の分化を阻害する一方で、NR4A1の欠失はT細胞寛容を克服してエフェクター機能を増強するとともに、腫瘍および慢性ウイルスに対する免疫を増大させた。機構的には、NR4A1は転写因子AP-1の結合部位へと選択的に誘導され、そこでAP-1機能を阻害することによってエフェクター遺伝子の発現を抑制する。NR4A1の結合はまた、ヒストン3リシン27のアセチル化(H3K27ac)を促進し、寛容関連遺伝子群の活性化をもたらす。従って今回の研究は、NR4A1がT細胞機能不全の誘導における重要な一般的調節因子であり、腫瘍免疫治療の有望な標的であることを明らかにしている。

