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物性物理学:反強磁性酸化鉄結晶における調節可能な長距離スピン輸送

Nature 561, 7722 doi: 10.1038/s41586-018-0490-7

スピントロニクスは、従来のエレクトロニクスのような電子電荷の輸送の代わりに、電子の固有角運動量であるスピンの輸送を利用する。スピントロニクス研究の長期的な目標は、スピンベースの低散逸コンピューティングデバイスを開発することである。最近、強磁性絶縁体においてスピン流の長距離輸送が実証された。しかし、最も一般的な種類の磁性材料である反強磁性秩序材料には、スピントロニクス応用向けとして強磁性系に勝る重要な利点がいくつかある。例えば、反強磁性体は、正味の磁気モーメントを持たないため安定で外部磁場の影響を受けにくく、テラヘルツスケールの周波数で動作させることができる。反強磁性体の特性はスピン輸送に望ましいが、そうした輸送の間接的観測の結果から、反強磁性体中を通るスピン伝達はわずか数ナノメートルに限られることが示されている。今回我々は、スピンホール効果を利用してスピンを注入することによって、最も一般的な反強磁性酸化鉄である反強磁性絶縁体ヘマタイト(α-Fe2O3)の単結晶中で、スピン流が長距離伝搬することを実証する。我々は、外部磁場を用いて反強磁性共鳴周波数を調節することによって、ヘマタイト–白金界面(ここでスピンが蓄積されてスピン流が生じる)を横切るスピン流の流れを制御した。その結果、この単純な反強磁性絶縁体が、数十マイクロメートル以上の距離にわたって、反強磁性ネール秩序と平行にスピン情報を伝達することが見いだされた。この機構では、最も有望な複合強磁性体と同程度の効率でスピンが輸送される。今回の結果は、室温で磁場なしで動作する、電気的に調節可能な反強磁性絶縁体ベースの超高速低電力スピン論理デバイスへの道を開くものである。

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