Letter

環境科学:海水準上昇に対する全球の沿岸湿地の将来の応答

Nature 561, 7722 doi: 10.1038/s41586-018-0476-5

21世紀における海水準上昇に対する沿岸湿地の応答は、まだよく分かっていない。全球規模の予測からは、現在の沿岸湿地面積の20%(海水準上昇が小さいシナリオ)〜90%(海水準上昇が大きいシナリオ)が失われ、生物多様性や極めて貴重な生態系サービスの喪失につながることが示唆されている。こうした予測では、非常に重要な地形学的フィードバックや社会経済システムのフィードバックの全てが必ずしも考慮されているわけではない。本論文では、沿岸湿地が堆積物付加によって鉛直方向に増大する能力と、堆積空間、すなわち細粒堆積物が堆積し湿地の植生が定着できる鉛直方向と水平方向の空間の両方の要素を考慮した、統合的な全球のモデル化法を提示する。我々はこの方法を用いて、21世紀における全球の海水準上昇と人為的な沿岸域の占有への応答で生じる沿岸湿地の全球規模の変化を評価した。今回のシミュレーションの結果に基づいて、沿岸湿地の37%(現在の堆積空間に関する今回の見積もりの上限)以上に十分な堆積空間があり、堆積物の供給が現在の水準で維持されれば、全球的には、湿地は減少するのではなく、現在より最大で60%増大する可能性があることが見いだされた。さらに、これまでの研究とは対照的に、堆積空間が現在の水準より増大しないと仮定すると、2100年までに全球の沿岸湿地の0~30%が失われると予測された。今回のシミュレーション結果は、全球の湿地の回復力は、主に堆積空間の利用可能性によって決まることを示唆している。堆積空間は、沿岸域における人為的なインフラ建設の影響を強く受け、そうしたインフラは21世紀にわたって変化すると予想される。今回の知見は、沿岸域管理における、自然を基礎とした入念な適応的解決策を通して堆積空間を十分に増やすことができれば、沿岸湿地の大規模な減少は、全球の海水準上昇の必然的な結果ではなく、避けられる可能性があることを示している。

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