幹細胞:Polyloxバーコーディングによってin vivoで明らかになった造血幹細胞の運命
Nature 548, 7668 doi: 10.1038/nature23653
複雑な器官や組織の発生学的デコンボリューションを個々の細胞のレベルで行うことは困難である。非侵襲性の遺伝的運命マッピングは広く用いられてきたが、蛍光マーカータンパク質の種類が少ないことがその分解能を制限している。はるかに多い細胞マーカーが、ウイルスの挿入部位、ウイルスのバーコード、トランスポゾンやCRISPR–Cas9ゲノム編集を基盤とする戦略を用いて作製されている。しかし、in situで特定の時期に組織特異的にバーコードを誘導することは達成できていない。今回我々は、Cre–loxP組換え系を基盤として、広く適用可能な内因性バーコーディングを可能にする人工DNA組換え座位を開発(Polyloxと命名)したことを報告する。in situでのPolylox組換えにより、実質的なバーコードの多様性は数十万種類に達し、単一細胞のタグ付けが可能になった。我々は、この実験系を運命マッピングと組み合わせて用いて、in vivoで造血幹細胞(HSC)の運命を調べた。造血細胞系譜の指定の従来のモデルでは主要な枝がほとんどない樹形図を仮定している。もっと最近では、より効率的な単一細胞解析の開発や移植効率の改善に一部後押しされて、異なるモデルが提案されており、これらのモデルでは、マウスおよびヒトでは単一細胞系譜へのプライミングがHSCレベルで起こる可能性が示されている。我々は、胎仔マウスのHSC前駆細胞にバーコードを導入して、成体マウスのHSC区画は胎仔由来のHSCクローンのモザイクであること、そしてそのクローンの一部は予想外に大きいことを見いだした。HSCクローンの大半は、多数あるいは少数の細胞系譜運命を生み出すことから、単一細胞系譜へのプライミングに対する反論となり、1つのクローンでは細胞の分化能が一貫して使われていることが示唆される。胎仔および成体マウスの両方での誘導後のバーコードの広がりから、骨髄系–赤血球系共通細胞の発生とリンパ球系共通細胞の発生の間の基本的な枝分かれが明らかになり、長年想定されていながら異論もあった樹形図のような造血細胞系構造が裏付けられた。

